トビー、100キロの壁に挑む!四万十川ウルトラマラソンの壮絶な1日
2024年10月20日、高知県の四万十川沿いを走るウルトラマラソンで、県庁マン「トビー」がついに100キロの挑戦に臨みました!100キロという途方もない距離、険しいコース、そして疲労の波との闘い・・・。トビーは果たしてどのようにしてこの過酷なコースを駆け抜けたのでしょうか。今回はトビーの奮闘の様子を、これまでの挑戦にも密着してきた編集部スタッフがお伝えします。
目次
四万十川ウルトラマラソンとは – 挑戦の場は日本3大コースのひとつ-
日本3大ウルトラマラソンの一つに数えられる四万十川ウルトラマラソンは、その名の通り四万十川沿いを駆け抜ける日本屈指のウルトラマラソンです。100キロと60キロの2部門が用意されており、全国から集まるランナーたちが美しい風景とともに過酷なレースを楽しみます。コースの特徴は、四万十川のパノラマビューと2つの「沈下橋」です。増水時には川に沈むこの橋を走り抜け、さらにはコース一番の難所となるスタート直後に最大高低差600mの山間も越える、経験あるランナーにとってもタフな挑戦です。
100キロという距離は、普通のマラソン(42.195キロ)の倍以上。沿道からの声援や地元のボランティアのサポートも、ランナーにとっては大きな支えとなっています。
トビーの挑戦 – 大会前の準備と目標
100キロの初挑戦に向け、トビーは日々のトレーニングに取り組んできました。早朝や仕事を終えた後、週末に練習を積み重ね、100キロを完走できる身体づくりを行ってきました。フルマラソンでサブスリーを目指した時は、心拍数の強度を上げるトレーニングが中心でしたが、今回は筋持久力を高める為、長距離をゆっくりと走るトレーニングを中心に取り組んだそうです。ただ、練習で40km以上の距離を踏めなかったことが不安が残ると話していました。どういった結末を迎えるのか。
大会目前のトビーの心境は下記の記事をご覧ください。
レースの模様 – ラップタイムから見るトビーの奮闘
大会当日、まだ夜明け前の早朝、四万十川ウルトラマラソンのスタート地点となる旧蕨岡(わらびおか)中学校に足を踏み入れると、驚きの光景が広がっていました。ライトに照らされたグラウンドには、まだ夜明け前の早朝にもかかわらず、そこには既に1600人ものランナーたちが集まっており、その多さに思わず息を呑みました。
多くのランナーが、これから始まる100キロの長い道のりを前にしているというのに、その顔には緊張や不安ではなく、むしろ生き生きとした表情が浮かんでいました。ウルトラマラソンは、通常のレースの倍以上の体力と精神力を要するであろうに、集まったランナーたちは、その挑戦を「楽しむ」という気持ちで迎えているようでした。
そんな中、トビーには少し緊張した様子が見受けられます。これまで練習でも走ったことがない未知の距離と、掲げたサブ10(10時間以内に完走)の目標達成に期待する、私たちの存在がプレッシャーとなっているようです。
午前5時30分、100キロの距離に挑むランナー達が一斉にスタートします。これから約10時間に及ぶ彼らの長い1日が始まります。
以下、トビーのラップタイムを基に1日を振り返ります。
スタート〜20キロ:順調なスタート
・スプリットタイム※1:01:57:36
・ラップタイム※2:1:56:04
列の後方に位置したトビー。レースがスタートしてから1分32秒後にスタートゲートを通過します。レース序盤は緊張しつつも、ペースは順調そのもの。レース前には、スタートから40キロ地点までの高低差600mの峠の攻略がサブ10達成の肝と語っていたトビー。上りを6分/キロ以内の目標値としていたなか、登り終わり手前の20キロ地点でラップタイム1時間56分と順調な滑り出しです。後にトビーは「15㎞ぐらいまで思ったよりも上りが緩やかでリズムよく走れました。そこから21㎞までの急な上りはかなりきつかったですが、想定ペース内で問題なく走れていたため、サブ10の可能性を感じた」と語っていました。
※1 スタート地点から、計測点までにかかったトータルでの経過時間
※2 各計測点間にかかった時間
20キロ〜40キロ:峠超え、孤独との戦い
・スプリットタイム:03:44:17
・ラップタイム:1:46:41
この区間は下り坂のコースで一気に駆け下ります。着地の衝撃を和らげ、足に疲労を溜めないランニングテクニックが要求されます。トビーは、ここで絶対に突っ込まないことを意識していたそうですが、体の調子もよく、少しでもタイムの貯金を作りたいという気持ちが交差していたそうです。
道幅の狭い曲がりくねった山道が続く為に、応援者の数も一気に減ります。他のランナーの足音のみを耳にしながら、約2時間もの間黙々と走り続ける、まさに孤独との戦いの区間です。
40キロ〜60キロ:四万十の絶景、応援の力
・スプリットタイム:05:40:33
・ラップタイム:1:56:16
ここからは四万十川の絶景を眺めながら、パノラマが広がるフラットなコースが続きます。峠を越えて目に飛び込んでくるのは多くの応援者の人々。温かい声援が癒しとなりエネルギーとなります。
私たちは、55キロ地点の四万十川名物「沈下橋」にてトビーを待ちます。「沈下橋」とは川の水面近くに設けられた欄干のない橋で、大雨などの増水時には川底に沈むことが特徴です。川の上を駆け抜ける感覚や、沈下橋の上から眺める美しい風景はランナーの心に残る景色となり、この大会が人気の理由の一つです。
手元の時計で午前10時31分、沈下橋の対岸にトビーの姿が見えました。スタートした背中を見送ってから5時間後の再会。
私たちの前で折り返す元気な笑顔のトビーに安心したのと同時に、5時間、55キロを走り続ける姿に胸が熱くなります。
60キロ〜80キロ:ウルトラの洗礼、トビーの誤算
・スプリットタイム:08:10:27
・ラップタイム:2:29:54
61.5キロ付近のレストステーションにて、トビーの声を聞くことができました。「キツくなってきました。結構ギリっす。特に足が・・・。」言葉数は少なく、表情も辛そうです。あんぱんやおにぎり等の補給食を口にして、休憩は行わず直ぐに再び走り始めます。
この時を振り返ったトビーは、「少しずつタイムが落ちていました。貯金が無くなっていく焦りで、レストステーションでのエネルギー補給が疎かになってしまいました。まだここからフルマラソンの距離を走ることを冷静に考えられていたら、ここでの時間の使い方が変わってたかもしれません」と語っていました。
これまでの最長ランニング距離が60キロのトビー。ここからは未知の距離です。
そして、75キロを過ぎたところでついにトビーの足が止まります。これまでで最長のラップタイム、40キロ地点でのラップタイムを基準にすると、約43分多くかかったことになります。本来なら100キロを一定のペースで走りたかったトビー。20キロまでの登りを快適に走れたことで、その後の下り坂を想定より速いペースで走りました。下りは重力により、気持ちよく走れますが、登り以上に足に伝わる衝撃の蓄積が、ここへきてトビーを襲いました。
80キロ〜100キロ:サブ10は?完走は?
・スプリットタイム:11:05:00
・ラップタイム:2:54:33
つい、「あともう少し!がんばれ!」と声に出したくなりますが、残りは20キロ。走っては歩きを繰り返す満身創痍のトビーにとって、決して短いとは言えない距離です。私たちは見守ることしかできずに、90キロ付近からの残り10キロはメディアの車が入れない為、我々はゴールで待ちます。
そして、午後3時30分、スタートから10時間経過・・・
ゴール会場にはトビーの姿はありませんでした。目標としていたサブ10は叶いませんでした。
私たちは、そんな目標達成など忘れて、トビーが無事にゴールできることを祈って待ちました。
そして、ついにその時が。午前5時30分にスタートしたトビーは、11時間5分後の午後4時35分、みごと100キロを走破してゴールテープを切ることができました。完走です!
この日の最高気温は25.7℃。強い日差しも照りつけ、ランナーにとっては過酷な環境でした。取材中、走り続けるのが難しくなるランナーを多く見て、トビーも完走できないのではと不安を感じていました。ゴール後のトビーにそれを伝えると「絶対諦めず、絶対完走しようと思ってましたよ!」と一蹴されました。タフな男です。
改めて、トビーにウルトラマラソン初参加の感想を伺いました。
無事に完走して、率直な感想はいかがですか?
「目標達成できず、すみません。これで2連敗です。いや~、正直キツかったです。今までで一番苦しかったです。75キロを過ぎて足が動かなくなった時は、心が折れかけました。でも、応援してくれてる地元の方の声援も励みになりましたし、一緒に頑張っている他のランナーの姿からもエネルギーをもらいました。エイドも沢山あるんですけど、ボランティアの皆さんのあたたかいサポートや多くの方の協力のもとで、四万十の景色を見ながら走れているので、四万十川ウルトラマラソンに関わってくれている方々に本当に感謝ですね。」
フルマラソンと比べて、違いは何ですか?
「全然違う競技ですね。10時間以上、体を動かし続けたことがないですし、カロリー補給や暑さ対策など、フルマラソン以上に体のケアを意識した走りが求められるなと感じました。練習は、心拍数を上げて負荷をかけるよりも、距離を伸ばすトレーニングをしたのですが、100kmを走りきるには、まだまだ走り込みが足りませんでしたね。」
またウルトラマラソンに挑戦しますか?
「ウルトラマラソンはもう走りたくないです!ただ、昨年60kmの部門を走った後も、同じことを思ったのに、今年100kmに挑戦してるんです。数日経つと、なんでもっと走れなかったんだって悔しさが込み上げてくるんです。なんだかよくわからないですけど、これがマラソンの魅力なんだと思います。
とりあえず、今シーズンはフルマラソンの大会に2本参加予定なので、そっちで頑張りたいなと思っています!40kmが短く感じるかもしれませんね(笑)」
取材を振り返って
100キロと60キロのコースを合わせて2,200名のランナーが、己の肉体のみで足を動かし続けゴールを目指す不屈な精神力を目の当たりにしました。私たちの知らないところで、多くの方がそのようなことにチャレンジしている現実に驚いたのと同時に、11時間以上も身体を動かし続けた後に、次のマラソンの意気込みを語れるトビーの異常さにも驚きました。
因みに、この日のトビーの消費エネルギーは7,103キロカロリー。ぶっトビーです。
トビー、これからも様々なことに挑戦して、私たちに勇気と感動を届けてください!