道路のない離島、「鵜来島」の夏
道路も信号もない離島、鵜来島(うぐるしま)。外洋に面し黒潮に囲まれた鵜来島は、人口30名に満たない人々が暮らす有人離島です。急傾斜地に築き上げられた石垣と共にある島独自の生活は、日本の「島の宝100景」にも選ばれました。高知県民でもなかなか訪れる機会のないこの島での滞在の記録をお届けします。
四国の西南端に浮かぶ鵜来島を訪れるには、高知県宿毛市片島港からの定期船を利用します。片島港へは高知ICから車で約2時間半。更に片島港から鵜来島へは一日2便運行の定期船を利用して約1時間を要します。目的がないと訪れる機会のない鵜来島には、それ故に守られてきた文化と、ありのままの自然が残されています。
目次
移動の船から見える景色
有人離島とはいえど、行けばなんとかなると思うのはご法度。鵜来島の滞在をより充実した時間にするために、アクティビティを楽しみたい場合は事前にツアーやプランに申し込むのがおすすめです。今回は、鵜来島で様々なマリンアクティビティの提供と宿泊施設の運営を行う「うぐるBOX」さんを利用しました。
利用したプランはオーダープラン。希望のアクティビティを伝えて、実現可能なプランを提案して頂きます。
鵜来島への移動は通常定期船を利用しますが、今回は特別に、取材にご協力頂いた「うぐるBOX」のご主人である西内さん自らが操船する船で島に向かいます。
船に乗り込むと、手を伸ばせばすぐ届くほど近い海面の上を移動する非日常な体験がスタートします。
片島港を出港し宿毛湾内を抜け進んでいくと、青々しく変化していく海の色と強い潮風に、太平洋の中進んでいることを実感します。
見渡す限り空と海が広がる景色のなかに、徐々に近づいてくるのが鵜来島です。
太平洋の中に力強くそびえ立つ島の姿に圧倒されます。
港につくと、まずは歩いて5分程のところにある食事所と更衣室を兼ねた宿に向かいます。
鵜来島には道路がなく車がありません。
島の限られた地域に密集した住宅の間を縫って徒歩で移動します。
小さな路地を迷路のように進むさまは、まるで外国を訪れたような気分にさせてくれます。
島を囲む海でアクティビティ
船での移動で鵜来島に到着したとき、まず目に飛び込んできたのがその海の美しさ。岸に近づくにつれ太陽の光を浴び輝く水面に、島のもつポテンシャルを感じます。
早速マリンアクティビティを楽しむため、体験の準備に移ります。
宿で着替えを済ませ、体験に必要なアイテムをレンタル。ウェットスーツやシューズは、その場でうぐるBOXの西村さんがぴったりなサイズを提案してくれるので安心です。
レンタル品として用意されているシューズには、どこか懐かしさを感じます…
そう、皆さんおそらく一度は履いたことがある、学校で使う上履きです。
「履きやすく脱げにくい、丈夫で滑りにくい、余計な装飾もついていないので、シュノーケリングで使うフィンを履いてもフィット感が良いんです。」
と、西内さん。想定外のアイテムの登場でしたが、いい事だらけでシュノーケリングにぴったりなんだそうです。
その日の風向きや潮の流れ、海の透明度にあわせ、安全にシュノーケリングを行うことができる最適なポイントに案内していただきます。
この日は風が強すぎたため、西内さんのオススメポイントは断念。風が当たらない島の北西部のポイントへ船で向かいます。
ポイントに到着すると、船が流されないように碇で固定します。
船は岸際から少し離れたところに停泊していますが、船の上からでも海底の様子を見ることができるほどの透明度。高知県在住の取材陣もこれには驚きです。
シュノーケリングは口にくわえたシュノーケルのみで呼吸を行うため、不安な方は船上で練習しておきましょう。うぐるBOXのプランでは、ライフジャケット、浮力体、ウェットスーツ等を必ず着用するので、泳ぎに自信のない方でも安心して海面を漂いながらシュノーケル体験ができます。
各装備の正確な使い方と、安全にシュノーケリング可能な範囲のレクチャーを受けて、いよいよ海の中へ。
フィンと呼ばれる足ヒレに慣れるまで戸惑いますが、使い方のコツをつかんでくると、フィンの推進力でグングンと水中を進むことができるようになります。
カラフルな魚を求めて岸際まで移動します。空中に浮かんでいると錯覚するほどのきれいな水質に感動しきりです。休憩しつつ夢中になって魚を追っていると、あっというまに終了の時間に。
シュノーケルに夢中になっている間に、いつのまにか魚を捕獲していた西内さん。
なんと、このお魚たちが本日の昼食に並ぶそうです。
捕れたての魚でおもてなしの昼食
廃校を利用したシャワー室があり、オプションで温水シャワーを浴びることも可能です。
ちょっとしたことですが、嬉しいサービスです。
宿に戻ると、食卓に昼食が並び始めています。ほんの数十分前まで海の中を泳いでいたお魚たち。
「いただきます!」
ご主人の西内さんや宿を管理してくれているスタッフも一緒になって昼食タイムです。
採れたての魚は刺身になっており、バーナーで炙って贅沢にいただきます。
「何を食べても美味しいです。白米のおかわりもいただいて、身体を動かしたあとの空腹があっという間に満たされていきます。」と、皆さん大満足。
運動した後にお腹がいっぱいになったので、少しうとうとしてきます。
余計な音のしない島で潮風を含んだ空気が窓から吹き抜け、気持ちの良い午後を迎えます。
まるで異国の島内観光
午後からは島内を散策。急勾配な石積みの路地を登っていきます。立ち並ぶ家々の間を縫いながら登っていきますが、玄関横を通ったかと思えばすぐに同じ家の屋根を見下ろしているほどの勾配。不思議な感覚でした。
いつもの暮らしとの違いに小さなおどろきを見つけながら、島の集落を見渡せる高台にやってきました。
海の山に囲まれた小さな集落。鵜来島の暮らしを感じることができる風景です。
島を散策しながら、港近くの高台にある「春日神社」を訪れます。毎年秋には「春日神社大祭」の伝統神事が奉納される場という場所。
島にやってきて悪さをすると言われる牛鬼を、神輿とやぐらでやっつける「お練り」や、お稚児さんをのせた神輿をかついで島の石段を上り下りする「御下がり」など、迫力満点なのだそう。
神輿の担ぎ手や裏方などの運営スタッフを島外から募集する大変珍しいお祭り。神輿の担ぎ手は約100人程必要だそうで、担ぎ手は神輿を担ぐことで島民と一体となり祭りを楽しむことができます。
お祭りは人あってのものですが、お祭りがあることで人は元気づけられます。鵜来島の「春日神社大祭」も、鵜来島での暮らしが在り続けるために必要なものとして、島内外の人の協力により続いているのだと感じました。ぜひお祭りの時期にまた訪れたいです。
鵜来島の歴史にも触れられたところで、今回の滞在は終了。
おすすめの宿泊プランと鵜来島についてのQ&A
せっかくなので宿泊してみたいという方に、「うぐるBOX」さんが提供する1泊2日のプランをご紹介します。「スポる!高知」編集部のおすすめは、シュノーケリング、堤防釣りと食事3食がセットになった「シュノーケル1泊セットプラン」。
Day1
14:30 宿毛市営定期船を利用して片島港を出発
16:05 鵜来島港着、島内散策
17:00 共同調理、夕食
22:00 就寝
Day2
6:00 起床
6:15 共同調理、朝食
8:00 堤防フィッシング
10:00 シュノーケリング
13:00 シャワー、共同調理、昼食
15:00 フリータイム
16:05 宿毛市営定期船を利用して鵜来島港を出発
16:55 片島港着、解散
関東圏からお越しの方は、羽田空港〜高知龍馬空港の飛行機を利用して午前中に高知県にお越しいただき、高知龍馬空港からはレンタカーで宿毛市片島港を目指していただくことで宿毛市営定期船鵜来島行きの利用が可能です。鵜来島にて1泊2日滞在後は高知市内にて宿泊、翌日に高知市内を観光してから戻る2泊3日の高知旅もおすすめです。
関西圏からはお車でもお越しいただけます。明石海峡大橋を経由して四国にお越しいただき、鵜来島滞在後にはその日のうちにご自宅に戻る1泊2日の高知旅が可能です。
最後に、鵜来島に行きたい!と思った方へ、よくある質問についてご紹介します。
Q&A
Q:鵜来島でシュノーケリングにおすすめの季節は?
A:ベストのシーズンは7月〜8月ですが、ウェットスーツを着用すればゴールデンウィーク〜9月までシュノーケリングが可能です。
Q:シュノーケリングとダイビングの違いって?
A:ダイビングは海の中で呼吸をするための空気タンクなど多くの専用機材と資格が必要です。シュノーケリングには資格の必要がなく誰でも気軽に始めれます。海面に浮かんだ状態でシュノーケルと呼ばれるアイテムを使って外の空気を吸いながら水中の景色を眺められるのが特徴。ライフジャケットを着用しているので泳ぎの苦手な方でも安心して楽しめます。
Q:1泊2日プランにある共同調理って何?
A:「うぐるBOX」のプランで、魚をさばいたり、火を使う料理や味付けなどスタッフが行いながら、野菜を切ったりお皿を並べたりする簡単な作業を皆で行います。料理の苦手な方やお子様も一緒になって準備をすることで楽しい時間が過ごせます。
Q:虫はいますか?
A:鵜来島は自然豊かな場所なので蚊や蛾などの虫がいます。宿の室内は網戸や虫除けアイテムで予防はしてますが、気になる方は虫除けスプレーや肌を覆う服装など各自での対策も併せてお願いします。
Q:花火はできますか?
A:鵜来島には消防署がありません。もしもの火災に備えて島内での花火はご遠慮していただくようにお願いします。
Q:コンビニやスーパーはありますか?
A:コンビニやスーパーはもちろん自動販売機もない島です。必要なものは事前に準備してご持参いただき、また持ち込まれたもののゴミはご自身で管理して島内の自然環境維持にご協力をお願いします。
Q:船は揺れますか?
A:天候によって定期船やボートシュノーケリングの船がひどく揺れる場合もあります。気になる方は事前に酔い止め薬の服用をお勧めします。
最後に
島内には車の一台もなく、自動販売機もありません。我々の日常とは全く異なる時間が流れる鵜来島。島の周辺の美しい海はウミガメの生息地にもなっているため、シュノーケリング中はもちろん運が良ければ港の岸壁から泳いでいる姿を見ることもできるそうです。
有名なリゾート地のような整った設備はないですが、人の手により作り出すことのできない歴史と自然が育んだ空気は、まちがいなくここでしか味わえないものです。
今回ご協力頂いた「うぐるBOX」では本格的なジギングフィッシングからお手軽なファミリーフィッシングなどの釣り体験や宿泊のみの予約も承っています。
この記事をみて鵜来島に興味を持った方は、ぜひ足を運んでみてください。
その際には、島のルールについて事前に調べ、海でのアクティビティを楽しみたい場合はぜひ「うぐるBOX」が提供するようなプランをご利用することを強くお薦め致します。
ご自身と島の安全を第一に、しっかり準備して、遊びにきてください。
施設情報
うぐるBOX
住所/高知県宿毛市沖の島町鵜来島58
電話番号/080-4410-2441
HP/https://ugurubox.com/