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プロサイクリストが宿毛市を駆け抜けた、圧巻のロードレース!

プロサイクリストが宿毛市を駆け抜けた、圧巻のロードレース!

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全国各地で開催されている自転車競技のプロロードレースツアー「ジャパンサイクルリーグ」の公式戦(2022年 第8戦)が四国で初めて開催されました。日本国内における自転車ロードレースとしては初の試みである自動車専用道路を使った白熱のレースを、地域の盛り上がりとともにお届けします。

ジャパンサイクルリーグとは?

ジャパンサイクルリーグ(以下JCL)は2021年にスタートした日本の地域密着型プロサイクルロードレース。2022年現在10チーム約90名の選手が所属し、年間を通じて各地域で開催される公式レース及びJCLポイント付与対象レースにおける獲得ポイントで争うランキング形式のリーグです。
JCLに加盟する各チームはそれぞれの地域で市民参加型イベントや自転車マナー交通安全教室の開催・地元メディアへの出演等サイクリングを通して地域貢献活動を行っているのも特徴です。

宿毛市の魅力

宿毛市は高知県西部に位置し、愛媛県と境を接する人口約2万人の市です。
戦後復興の父と呼ばれた第45代内閣総理大臣吉田茂氏の出身地であり、早稲田大学の前身である東京専門学校の設立に尽力された小野梓氏など、政治、産業、文化など幅広いジャンルで多くの偉人を輩出しています。ソプラニスタの岡本知高氏や、力士の豊ノ島関、コメディアンの間寛平氏も宿毛市の出身です。
温暖な気候を活かして小夏や文旦等の柑橘類の栽培が盛んな地域であり、豊後水道に面した宿毛湾は魚のゆりかごと呼ばれるほど魚種の豊富な海で約1,000種類の魚が生息する釣りのメッカです。県内唯一の有人離島である沖ノ島と鵜来島は釣りに加えてスキューバダイビングも盛んで多くの愛好家が訪れています。クルーズ船も寄港可能な「宿毛湾港」を有しており、多くの客船が寄港しているほか、海上自衛隊の艦船が停泊することもあります。
また、これまで宿毛サイクルフェスティバルの開催や、リオデジャネイロ五輪自転車競技女子ロードレース金メダリストのアンナ・ファンデルブレッヘン選手率いる2020東京オリンピック自転車競技の女子オランダ代表チームが事前合宿を行うなどサイクリングを活用したまちづくりを積極的に行っています。

当日の様子

2022年9月25日、記念すべきJCL四国初開催となったこの日、午前8時の開場とともに、一般サイクリストも参加できるホビーレースに向けて参加者が続々と集まってきました。ホビーレースとはその名の通り趣味でサイクリングを楽しむ方が参加するレース。事前に申し込みを行えば、中学生以上なら誰でも参加可能でプロと同じコースの一部を走れるので人気なのだそう。参加者の皆さん、プロさながらの出で立ちで準備万端の様子でした。

今回のホビーレースは、1周約1.8キロのコースを制限時間60分間に何周回できるかを競う形で実施。9月といえど日差しの強い高知で1時間走り切った皆さんに、感想を伺いました。

「お客さんもたくさんいる中で、プロと同じコースを走らせてもらって凄い楽しかったです。」

徳島と高知で四国大学生対決をしていたお二人は

「上りで皆のペースが上がるので体力の配分に気を使ったのと、コーナーが高速で落車に気をつけながら走って神経使ったので精神的にも疲れました。」

プロ仕様のコースレイアウトに苦戦したようです。やり切った表情が素敵ですね。

この頃から、観客も増えてきはじめ会場も徐々に賑やかになってきました。

ファンのお目当てはピットウォークツアー。レースに備えて準備をする各チームのピットを見学できるツアーで、チームオリジナルグッズの配布や選手と一緒に写真撮影が可能なレース開催日限定ツアーです。

また、特設ステージ前では「宿毛市立東中学校吹奏楽部」の演奏に続いて、地元を拠点に活動するよさこいチーム「幡多舞人」の演舞が披露され一緒にレースを盛り上げます。

そしてオープニングセレモニー。各チームの出場選手紹介のあとにフォトセッションが設けられます。

この時点でポイントランキングトップであり、東京オリンピック自転車競技にも出場した栃木・宇都宮ブリッツェン所属の増田成幸選手は「すばらしいロケーションでレースができることをとても楽しみにしています。多くのボランティアや関係者の方が朝早くから準備してくれているのを目にしました。そういった方々の協力によって出来たコースを走れることをとても楽しみにしています」と意気込みを語ってくれました。

国内初「自動車専用道路」を使ったレースがスタート

開始10分前、各選手がスタートラインに集結しました。
いよいよレースがスタートです。1周12.5キロを10周する合計125キロの戦いが始まります。

JCL高知大会の見どころはなんと言っても、「自動車専用道路」を使って日本で初めてプロのロードレースが行われるというところです。

国道56号中村宿毛道路を全面通行止めにして、平田インターチェンジから宿毛和田インターチェンジ方面への片道3.7キロ、往復7.4キロを含むコースは1周の3/5が自動車専用道路上というスピードレースの様相に加え、高低差が約40mあるなどダイナミックで展開の読めない混戦が予想されるレイアウトです。

スタート&フィニッシュ地点があるメイン会場をスタートした選手たちは、高知西南中核工業団地を抜けて平田インターチェンジから自動車専用道路に侵入、緩やかな上りを進んで折り返しを迎えたあとは下りでいっきにスピードアップして自動車専用道路を出ます。

その後は美しい田園に囲まれた農道を走り抜けて、メイン会場である工業団地に戻ってきます。

メイン会場には1,000人以上の来場があり、沿道にも多くの方が観戦に訪れていました。

会場内にはJCLオフィシャルブースの他、飲食、特産品、観光協会など約20のブースがあり、地元の料理に舌づつみを打ちながら観戦をする方、スマートフォンでのライブ中継とあわせてお気に入りのチームを応援する方など、皆さんがそれぞれの方法でレースを楽しまれているのが印象的でした。

「コロナ禍で自転車を始めてJCLを知ってファンになりました。来年も再来年も絶対やってほしいです」(地元の女性)
「みんなめちゃくちゃ速いです。漕ぐのも早いし凄いです」(地元中学生)
「2位の集団はトップに追いつけないんじゃないかと思ったけど最後の最後で追いついて、楽しいレースでした」(兵庫県からの観戦者)
「自転車のレースは初めて見ました。昨日YouTubeを見て応援のしかたを勉強しました。また来てくれたら嬉しいですね」(地元の女性)
「地元でやってくれるってことで、すごい楽しみにしていたので仕事を休んで来ました」(宿毛市出身サイクリスト)
「実際に見ると迫力がすごい」(地元の男性)
「近くでこういう大会があるのは珍しいので家族で応援に来ました」(地元の家族)
「初めてプロの試合をみたけど迫力があって見応えがありました、これをきっかけに沢山開催してほしいです」(地元の高校生)

地元で見る初めての光景に、皆さん大興奮の様子でした。

レースは序盤から各チームが積極的にアタックを行い、終盤まで激しいスピード争いのレースとなりました。

最後の150m直線まで勝敗がわからない大接戦となったレースを制したのは、スパークル大分レーシングチーム所属の孫崎 大樹選手。

孫崎選手コメント

「スパークルとしてロードレースで初勝利をあげれて嬉しいです。アップダウンがあって日本で初めて自動車専用道路を使うということで僕もワクワクしていましたし、内容としては逃げができてそれが捕まってスプリントになるという激しいレース展開になったので、走ってる僕らとしても面白いコースでした。特に自動車専用道路は路面も綺麗でスピードが出るので疾走感もあって、大自然をバックに自転車が集団で走る景色っていうのは非日常感があって見てる方も楽しめたと思います。」

高知ということで鳴子(よさこい祭りの踊り子が手にもつ楽器)の応援や、地元の皆さんからの応援はどうでしたかという質問には

「声や音がめっちゃ聞こえてました。違う会場では聞けないような応援だったので新鮮な気持ちで嬉しかったし、個人としても初めての高知で自然の景色も楽しめてまた来年も開催されることを期待しています。」と答えてくれました。

JCLチェアマン片山右京氏 コメント

「自動車専用道路を使ってみるっていうのはJCLにとっても新しいチャレンジでした。レースを振り返ってみると、逃げても後ろの集団がキャッチしやすい凄くスピード感のある展開で、沢山のチームがゴールスプリントに絡んで非常にダイナミックなレースになってよかったと思っています。JCLのスローガンは”街をスタジアムに”ですが、言い換えれば地元の方の協力を得て皆で街をスタジアムにして、街を元気にしていきたいというところがあるので、この先は地元の方と一緒に大会をお祭りにしていきたいんですよね。高知の方たちは、よさこい祭りがあっておもてなしの文化があってDNAの中にお祭りの文化が組み込まれてますから、自転車レースを知っていただいた今後は高知にはサイクルツーリズムとかロードレースがあって、更に未来に繋がるモビリティが始まっていていろいろな形で高知の新しいお祭りを作っていっていただいて、それにわれわれも貢献できればと思っています。」

今回の新しい取り組みが未来に繋がる視点でお話をしてくれました。更にこれからロードレーサーを目指す方に向けて

「日本ではロードレースはメジャーどころかマイナーにも至っていない競技です。野球で言えば大谷翔平選手とか、ゴルフで言えば松山英樹選手とかがいるように、まわりがちゃんとサポートをかけていけば、日本の若い選手でもオリンピックで金メダルを獲ったり、ツール・ド・フランスでも一番になれる日が来ることを僕は信じています。日本の子どもたちに正しい自転車の乗り方や競技の魅力を伝えていって、世界で活躍する選手がでてきてくれればと願っています。ぜひ皆さん童心に返って自転車に乗っていただいて、会場にも足を運んでいただいて、自転車ともっと触れ合ってもらえたらなと思っています。」熱いメッセージを頂きました。

最後に

国内で初めて開催された「自動車専用道路」をつかったプロ自転車ロードレースの模様をお伝えしました。JCLの公式戦自体が四国初開催ということもあり近県からの来場者も多く見られ、また多くのブースが出店したメイン会場はさながらお祭りの雰囲気を漂わせていました。沿道では近所の方が椅子に座って応援をするなど、まさに街全体がスタジアムとなっていたのが印象的な1日でした。当日はもちろん、前日の宿泊施設や飲食店などでもサイクリスト同士の交流が多く見られ、宿毛市に新しい風を吹き込んだ大会だったのではないでしょうか。