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ダンスがまちを変える 。地域の力が育んだ、“踊るまち四万十”。

ダンスがまちを変える 。地域の力が育んだ、“踊るまち四万十”。

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鳴子の音が四万十のまちに響いた日。 2025年9月、「よさこい四万十2025」が過去最多となる参加チームで開催され、地域はかつてない熱気に包まれました。

この盛り上がりの背景には、高知県西部・幡多地域にある四万十市が近年取り組んできた「ダンスによるまちづくり」があります。子どもから大人までが踊ることを楽しみ、地域のなかに文化として根づいてきた「ダンスのある日常」。その積み重ねが、今年、新たなよさこいチーム「よさこいラプチャーズ」の誕生というかたちで一つの実を結びました。

この記事では、ダンス文化を通じて育まれてきた四万十市の地域力、そして「踊るまち」としての歩みを、当日の様子とともに振り返ります。

まちに鳴子が響いた日

2025年9月14日、「よさこい四万十2025」が開催され、過去最多となる59チーム約3,200人が参加しました。市内6カ所の演舞場で舞が披露され、四万十市全体が熱気に包まれました。

特に、今回初出場となったチーム「よさこいラプチャーズ」は、プロのダンサーと一般公募で集まった踊り子という異色の組み合わせで注目を集める存在となりました。他にも、幡多地域のチームやよさこい祭り本祭での各受賞チームも参加し、踊り子の輝く笑顔と鳴子の美しい音色が、四万十市の空気を明るく染めた一日となりました。

ダンスによるまちづくりが育てた“土壌”

四万十市では近年、ダンス文化を活用した地域振興に力を入れています。

代表的な取組の一つが、高知県とダンスを通じた地域貢献などを目的に連携協定を結ぶ、日本発のプロダンスリーグD.LEAGUEに所属する日本トップクラスのプロダンスチーム「CHANGE RAPTURES」のメンバーを講師に招くワークショップです。中村高校のダンス部のメンバーや、初心者を含む地域の子どもから大人までが参加し、表現の楽しさに触れる機会となっています。

さらに、文化複合施設「しまんとぴあ(正式名称:四万十市総合文化センター)」の整備が進み、日常的にダンスや創作活動に取り組める拠点が整いました。しまんとぴあには805席の座席を備えた大ホール「しまんとホール」や防音スタジオが複数室整備され、イベントや練習など幅広い用途での利用が可能となっています。

2023年には、「しまんとぴあ」の杮落としイベントとして「四万十市長杯 DANCE BATTLE&CONTEST」が開催されました。行政や地域の住人らの「ダンスで元気なまちづくり」を合言葉にしたこれらの取組により、地域に根ざした新しい文化のかたちが育ちつつあります。 

よさこいラプチャーズの誕生と挑戦

こうした地域の動きを背景に誕生したのが、新たなよさこいチーム「よさこいラプチャーズ」です。

2024年、CHANGE RAPTURESのメンバーがよさこい祭りに参加したことをきっかけに、CHANGE RAPTURESと一般公募で集まった踊り子によって新たなチームが立ち上がりました。
地元の中村高校ダンス部員やCHANGE RAPTURESが運営する東京のスタジオ生、またこれまでメンバーが学校訪問や部活などダンス指導を行なった高知県内各地から参加した小中高生らも加わり、幅広い世代・立場のメンバーによって構成されています。

振付はCHANGE RAPTURESのメンバーで、高知県香南市出身の「TAKORON」が担当。「よさこいラプチャーズ」は初出場ながらも地域からの期待と関心は高く、特に若者にとってチームの存在は「観るお祭り」から「参加するお祭り」への転換を象徴する取組といえます。

よさこい四万十の現在地と広がり

「よさこい四万十」は2011年に中村商工会議所青年部の有志で始動。当初参加の8チームから2013年の第3回大会では14チーム・約700人が参加して以降、継続的な地域参加と運営努力により、年々発展してきました。 

2025年には県内外から59チーム・約3,200人が参加する規模へと拡大。現在では、市民・関係団体・行政が一体となって支える「地域参加型の文化イベント」として定着しています。 

ラプチャーズの演舞と、まちが受け取ったもの

「よさこいラプチャーズ」の演舞は、伝統的なよさこいの振り付けにストリートダンスのステップや表現を大胆に取り入れた、まさに“新しいよさこい”を感じさせるものでした。鳴子を鳴らしながら繰り出される力強い動きの中に、リズムを刻む軽快なステップやしなやかなボディワークが溶け込み、これまでのよさこいとはひと味違うエネルギーで、会場を盛り上げていました。 

特に印象的だったのは、楽曲の展開に合わせて披露された4人のダンサーによるソロパート。音楽の高まりを受けて繰り出されるそれぞれのムーブが、観客の目を惹きつける大きな見どころに。息をのむように見入る人々が次々に拍手を送り、観光で訪れた人も地元の人も、プロのダンスに魅了されるひとときを共有していました。

また、演舞場を巡るごとに、踊り子たちの表情はより豊かに、動きもさらに伸びやかになっていったのが印象的です。CHANGE RAPTURESのメンバーも、踊るたびに表情が柔らぎ、やがて楽しさを全身で表すようになりました。フィナーレを迎えたときには、チーム全体が達成感に包まれ、笑顔が一面に広がっていました。その姿は、踊りを通じて「地域とつながることの喜び」を体現しているかのようでした。

よさこいとストリートダンスが融合することで生まれた新たな表現は、四万十のまちに新鮮な風を吹き込み、観光客や地域住民にとっても“ここでしか見られない体験”となりました。 

「新しいよさこい」を体現した「よさこいラプチャーズ」。主役となった踊り子やメンバーはどのように感じたのでしょうか。ここでは、その声を紹介します。 

推しがNENEさんだという、高校でCHANGE RAPTURESのワークショップを受講した参加者。 

「めちゃくちゃ楽しかったです。ダンスの経験としても成長できた気がするし、NENEさんの動きや表情を近くでたくさん見れて勉強になりました。絶対また参加したいです!」 

「よさこいラプチャーズ」に参加したCHANGE RAPTURESのメンバーである、「 TAKORON」「NENE」「Haruto」「AYUMI」にもお話を伺いました。 

TAKORON:「よさこい祭りは、爆音の中で鳴子の音を聞けて踊れて、自分の中で毎年絶対体感したい夏のお祭りになっていて、よさこいラプチャーズという新しいかたちで参加できて嬉しかったです。
練習は動画で覚えてもらったり、それぞれの地域での個別練習だったり、普通の練習よりも大変な環境のなかで踊り子の皆さんが頑張ってくれたおかげで、よさこいラプチャーズが生まれて、本当にスタッフ、関係者含め皆さんに対する感謝が大きいです。これからも進化しながら続けていきたいです。 改めて、”よさこい”がある高知が好きだなと思いました」

NENE:「地域全体が一体となって応援してくれる温かいお祭りで、東京では味わえない体験でした。高知ならではの空気感の中で踊れて楽しかったです。
私たちにとっても初めての挑戦で不安もあったんですけど、皆さんが最後まで元気に楽しそうに踊っている姿を見れて、私たちも嬉しかったです。」 

Haruto:「県民性なのか、人が温かくてピリピリしていなくて、”すみません”や”ありがとう”の言葉があって、高知県は優しい人が多い印象です。 
よさこいは、去年につづいて2回目の参加で、踊っていて感じるのはダンスとは違う楽しさ、面白さとか雰囲気があって、今はもうすでに夏の一番の思い出となってます。
子どもの笑顔が大好きで、今回のチームでも子ども達の笑顔がたくさん見れて、このよさこいラプチャーズが何年も続いていけるように、僕たちも普段の活動をもっと頑張ろうと思いました。今年もよさこいラプチャーズに参加してよかったなって、夏が来るたびに思ってもらえる環境を提供し続けていきたいです。」 

AYUMI:「商店街を歩いていても皆さんがうちわで仰いでくれたり、声をかけてくれたり、一体感があって、四万十市のまちの温かい空気を感じられました。
四万十市の皆さん、高知市の皆さん、今回参加してくれた全ての皆さんのおかげで、よさこいラプチャーズとして参加することができたので、皆さんに感謝してます。よさこいという高知の伝統的なお祭りに出させていただいて嬉しかったし、楽しかったです。来年も続けれるように頑張ります」 

まとめ:踊ることが、まちを変えていく

四万十市が推進してきた“ダンスでまちを元気にする”取組は、地域の文化風土を少しずつ変えてきました。 

その象徴が、今回のよさこいラプチャーズの誕生です。プロの熱意に触発された市民が自ら踊りのステージに立ったことは、大きな成果のひとつといえます。今後も、こうした取組を通じて、地域に根ざした文化が生まれ継続されていくことが期待されます。 

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